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G20終了。あれこれ考えたこと

 

G20が終了した。

 

利害が相反している大国同士を一同に集めたにもかかわらず、大過なく終えたこと自体が大きな成果だったと思う。

 

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貿易体制の維持=米中間の平和の維持

 

首脳宣言も無事採択された。安倍晋三首相は閉会会合で「自由、公正、無差別な貿易体制を維持・発展できる共通点を見いだすことができた」と述べたという。

 

課題を解決しようと議論をすれば、たった2日の議論で終わるはずもない。そのなかで合意点を作り出した日本の存在感は、評価されてもいいと思う。「貿易体制の維持」というポイントで合意できたのは成果だと考える。

 

というのも米中貿易戦争は、総力戦が当たり前になった現代の戦争観において、軍事衝突の前哨戦とも捉えることができるからだ。経済の次はサイバー戦争、宇宙開発競争と進み、香港や台湾の問題を起点にして軍事挑発・衝突に向かう可能性もあった。だが米中は貿易でーー要は平和下でお互い利益を得ることを目指そうと、大枠でも意思疎通ができたことは意味のあることだ。

 

さらにファーウェイ問題では、安全保障の問題に関わらなければ米国企業との一部取引を認めても良いというトランプ大統領の発言もあった。習国家主席にすれば交渉の糸口だろう。これで両国の経済要人を逮捕合戦するような事態も当面避けられることだろう。

 

米中というグレートパワーの間に入り、立ち回るというのは、相当な外交手腕が無いと不可能だ。

 

イランにも行き、米中をはっきりと対決させず、さらに日本の利益になるように状況を持っていっているという事実を、各国が認識しているはずだ。日本の外交力の高さを示せたと思う。

 

 

韓国の孤立を確認

 

韓国については、「何もなかった」こと自体が成果だ。

 

・韓国が徴用工・レーダー照射問題で、譲歩する気がないことを再確認

・さらにその姿を主要各国が見た(日本の立場の正統性)

・徴用工問題において韓国を支持する国が現在のところ無いことを(おそらく)確認

 

中国・ロシアの横槍がないと判断したと思われる日本は、来週に韓国への経済制裁へと乗り出す。横槍が無いよう根回しの最終確認の場として、G20は適切だったはずだ。

 

これまで韓国が問題を起こしても、なあなあで済ませてきた。だが前提となる米韓同盟があやしい状況では、なあなあで済ませる意味もない。また韓国得意の”ムービングゴール””手のひら返し”によって何度も煮え湯を飲まされてきた日本が、毅然とした対応をしないと、逆に他国に侮られるだろう。

 

だが二国間の制裁に他国が干渉してくると、途端に話がややこしくなる。中国かロシアが韓国を支持して、中露韓と米日の代理抗争のようになることが日本政府の懸念事項だったはずだ。各国の意図の確認には、相当な注意を払っただろう。

 

 

パワーゲームの中の日本

 

アメリカ一強時代に比べ、外交は格段に難しくなっているはずだ。

 

グレートパワーがなくなったのに、中国という西側諸国的価値観を共有しない国が急激に伸びている。欧州は弱いままだし、米国はロシアから中国を仮想敵国に切り替えて動いている。

 

膨張したい中国の圧力。その中国の南を抑えるインドと良好な関係を築き、獅子身中の虫になることがほぼ確定している韓国とは距離を置き、米国だけでなくロシアとも不可侵の関係を保つ。日本は絶妙なパワーバランスの上に立っている。

 

相当シビアなコントロールが要求される状況だが、いま致命的な問題が無いのは、現在の政府の外交手腕が相当に優れているのだと思う。

 

G20が何事もなく終わったのは、実に重畳である。