読み耽り書き散らすのが理想の生活

ネット的世界の端っこで考えたことを書き留めているだけのブログ。

イタリア発イタリア着(内田洋子さん新刊)

 

イタリア発イタリア着
内田洋子
2019年2月発行
朝日新聞出版

 

 

 

エッセイとはなんだろう? 定義は? 他の文章の違いとは何か?

 

・・・とある人によれば、エッセイと他の文章を分けるのは「香気」の有無だそうだ。この文章には香気があるからエッセイ、無いからエッセイじゃない・・・。あやふやで主観的な定義だ。けれど、頷ける。

ある視点で切り取ることで、同じものごとや世界でも、見える世界の色が変わる。色が変わる。ものごとの角度がエッセイの肝で、エッセイストというのは視点の名手だと言えるかも知れない。

 

 

イタリア在住の内田洋子女史の新しいエッセイが出版された。

掲載されているエッセイは8編。「一 旅の始まり」「二 迷ったまま」と続き、「八 巡り巡って」で終わる。

イタリアでニュースソースを集め、日本に売る仕事をしている著者が、イタリアに来たばかりのころからが書かれている。はじまりは1970年代。すでに遠くなった昭和の追憶だ。

新しいものばかりに価値があるわけではもちろんなし。往時の遠国イタリアの日常の顔と、異文化に飛び込んだ当時の若き著者の戸惑いとタフさ、揺れる感情を知ることができる。 香り高いイタリアの往時の日常がわかるエッセイである一方、一人の日本人女性が寄る辺もないままに異国に飛び込んでいった冒険記でもある。

 

「もし語学が得意だったら、若いうちに異国に飛び込んで、職を得て働き恋をして、大冒険のような人生を過ごしてみたかった」

 

そんな想いを持って日々働く社会人や主婦の方にオススメしたい。このエッセイを通して、ひょっとしたらあり得たかも知れない、別の人生を想像してみるのも楽しい。