この世はしょせん夢芝居

ネット的世界の端っこで考えたことを書き留めているだけのブログ。

ファンは不完全さを愛す

日が長くなった。帰りの電車から見る空はまだ青さを残していた。

 

今日は昔馴染みの洋食屋で夕食を食べた。引っ越してしばらく足が遠のいていたが、今日はたまたま用事があって近辺まできたので、足を伸ばしてみた。2年ぶりなので、店がもう無くなっているかも知れないと思ったが、幸いまだその店はやっていた。

 

老夫婦でやっているこじんまりとした店だ。奥さんが清潔好きなのだろう、いつ行っても小奇麗に掃除が行き届いている。緑色の看板も変わらない。

 

食べるのは看板料理のハンバーグ定食。ハンバーグは箸を入れると脂が滝のように流れ出て来る。おそらく良質の牛脂が詰められているのだろう。切り取った肉に脂とデミグラスソースを絡め取って口に入れる。ハンバーグは側面をパン粉で固めて脂を吸わせているらしく、まんべんなくソースがかかっているのにパリッとした食感が残っていてとても美味しい。2年前と変わらない味でとても嬉しかった。

 

でも、店は相変わらず閑散としていた。お客は、わたしの他にたったひとりだけだった。

 

個人的にはものすごく良い店なのだが、昔から人気がない。どうしてだろうか。ちょっとお高いのもあるだろう。ハンバーグ定食で1100円だ。でも味を考えれば妥当だと思う。一番の理由は、商売っけの無さだろう。

 

表の看板は地味だし、メニューを眺めて観ても、飲食店では稼ぎ頭になるお酒が申し訳程度にしかない。一応、といった趣でワインも置いてあるが、銘柄の表記も無い。一方でソフトドリンクは充実している。それに、洋食屋なのだからパン食があっても良いと思うが、米しかない。

 

メニューのラインナップをちょっと変えれば、お客も来るし客単価もあがると思うのだが、それはしない。お米が好きで、お酒を嗜まない真面目な夫婦が味第一でやっているお店なんだとつい想像してしまった。

 

その不器用さがもどかしいけれど、なんだか好ましい。すごく好ましいと思った。

 

ファンというのは、相手の不完全さを愛すから、ファンなんだろうな。

逆に、完全なものには本当のファンはつかないのかもしれない。

 

名物のハンバーグの忘れないように噛み締めながら、この店にまた来ようと思った。毎週来るには、ちょっと遠いけど。