仮想通貨が招く「未来の社会」 Δ1(1/29)
2017年、仮想通貨ビットコインが市民権を持った年となりました。世界の仮想通貨全体の時価総額は2017年1月時点で200億ドル程度だったものが、11月時点で2000億ドルを超えました。
仮想通貨については、価格や技術が多く取り沙汰されていますが、仮想通貨は、今後どのように社会で使われていくのでしょうか。
多くの言説は、仮想通貨はいつかドルや円のような法定通貨の代替品になると考えているか、もしくは、仮想通貨をただの投機対象として考えていると思います。しかし、わたしの考えは少し違います。
結論から入ることを許してもらえるならば、法定通貨と仮想通貨は両立し共存する社会になるとわたしは考えています。法定通貨はそのまま残り、法定通貨の枠内の中で、仮想通貨を使ういくつもの緩やかなコミュニティが出来上がると想像しています。
図にしてみれば、下記のような世界です。
法定通貨が緩やかにこれまでの経済圏を維持するなかで、それぞれのコミュニティに特化した仮想通貨が適用され、コミュニティの結束の強化に貢献します。
例
イメージが湧きにくいかも知れません。いくつか例を出しましょう。たとえば、あなたはメルカリで売買しているとします。押し入れにしまってあったバッグを出品し、通常日本円で支払いを受けます。でもこれが海外、アメリカとの取引と仮定してみましょう(いまのところありえませんが)。あなたはドルで支払いをされたら困るはずです。ドルは日本で使えませんし、円に変えれば目減りするからです。しかしここで仮想通貨で支払いを受けたら、問題は解消します。受け取った仮想通貨はそのまま別の何かに使うことができます。
もうひとつ例を出しましょう。東南アジア諸国の日本人同好会があるとします。会員は例えばタイ、ベトナム、マレーシア、シンガポールなどに駐在しています。シンガポールに住んでいるAさんが東南アジア情報誌か何かを電子書籍を発刊したとします。同好の士で共有したいがそれなりに費用がかかっているので、販売することにしました。このときに共通する通貨があったら便利ですよね。東南アジア域内を統合するほどで無くてもいい。数十人の同好の士で共有できる通貨があればいい。そんなときに仮想通貨が使えれば便利でしょうね。
特徴的な機能を持つ仮想通貨「アルトコイン」
ビットコイン以外の仮想通貨を、アルトコインといいます。草コインと呼ばれるようなプロジェクトの実態がないようなものを含めて、1000種類以上のものがあると言われます。
それぞれのアルトコインには、機能上の特徴があり、無事プロジェクトが成功したアルトコインは、その特徴にあったコミュニティに適用されていくと考えられます。
一部のアルトコインには、「通貨」という役割の他に、「何らかの付加機能」がつけられています。この「何らかの付加機能」が、コミュニティの特徴を促進する、ということです。
もっとも開発目的がわかりやすく、かつプロジェクトが具体的になっているアルトコインとして、リップル(Ripple, XRP)というコインがあります。
このコインは「送金の利便性」に特化しています。リップルを使うことで、送金時間の短縮と、手数料の削減を狙い、ブリッジ通貨に徹しています。
このリップルというコインがうまくいった場合は、「大量の送金」を仕事とするコミュニティ(=業界)のなかで便利に使われ、威力を発揮するようになるでしょう。そのうちにリップルを使う国際送金コミュニティとそうでないコミュニティとに分かれ、リップルを使うコミュニティは、リップルを使用することで得られる利益によって、結束を強固にすると思われます。
国内で通貨を扱う分にはあまり困りませんが、海外に送金するときの手数料というのは結構なものです。これが安くなるというのは大変素晴らしいです。
ネットバンクの登場でネットで開示されている送金手数料は安くなっていますが、世界に工場を展開する一部上場などは、メインバンクはやはりメガバンクのうちのどれかです。海外といってもアメリカや欧州のような送金インフラが整ったところばかりではありません。たとえばアフリカのモロッコと日本との間でお金を送らなければいけないこともあります。モロッコの現地法人が、コア部品を日本の本社から輸入し、モロッコで車を組み立て、スペインで売る……みたいな感じです。想像になりますが、日本の本社へ毎月数億円の支払いがあっても不思議でないでしょう。このとき、送金手数料の他に、中継銀行のリフティングチャージ・受け取り側の銀行の手数料・両替する場合はスプレッドが費用として存在します。(継続して送金することがわかっている場合、銀行が割引送金条件を提示してくれたりしますが…)
どの程度にリップルが使われるのか、それは各銀行のプロジェクト次第になりますが、実装されれば海外送金手数料がぐっと安くなる上に、送金インフラの信頼性が向上します。そうなれば、日本企業は海外進出がしやすくなるでしょう。
リップルとの提携企業は東京三菱UFJ銀行や米アメックスなどの大企業も名を連ねており、「送金コミュニティ」でリップル(とそのネットワーク)が活躍してくれそうな予感がしています。
特性を持ったアルトコインたち ETH、NEM、WAVE、BNP
プラットフォーム性を全面に打ち出したコインもあり、イーサリアム(ETH)がこれに当たります。スマートコントラクトと言う概念が導入されており、わたしの理解によると、コインのやり取りに「契約を盛り込める」というものです。契約書とコインが一体になった魔法のコインです。スポンサーの顔ぶれが豪華で、マイクロソフト・インテル・IBM・トヨタなどが並んでいます。これらの大企業が仮想通貨を利用したサービスを展開するときには、イーサリアムはインフラコインとして機能することが期待されていそうです。またこれらの企業連合が、サービスで顧客の囲いこみをするときにイーサリアムをキーパーツとして使えば、簡単にその目的を達成できるでしょう。
他に、スタートアップ企業の資金調達を助けるのに最適と思われる、ネム(NEM)やウェーブ(WAVE)といったコインもあります。
スタートアップ企業が資金調達に苦しむのは万国共通だと思います。最初に自分がお金を準備する他、直接出資者を募る、市場で株式・社債を販売する・融資を受ける・クラウドバンキングによって資金を集める……などの方法があります。しかし旧来型の資金調達はお金だけでなく、おまけがついてくるのが通常です。つまり経営やお金の使い道について制限を受けるのです。誰もタダでお金をくれる人なんていません。出資者はスタートアップが成功することで得る株式価格の上昇や配当、あるいは利息の支払いを期待しています。クラウドバンキングでさえ、リターンを求められます(この点で、リターンを求めず、募集者への信頼を疑似証券化してお金を集めるVALUというサービスは画期的でした)。
ネムやウェーブといったコインは、トークンを自由に発行する機能がついています(DEXと言うらしいです)。トークンを買ってもらうことで、株式上場に近い効果が期待できます。つまり、スタートアップはトークンを販売することで現金を得て、トークン購入者はトークン価格上昇による利益を期待でき、もしくはスタートアップが準備するトークンと引き換えにできるサービスを期待できることになります。
あるいはバンクエラ(BNP)のような配当型のコインも面白いかも知れません。コインには、購入者に提携取引所の利益を分配する機能をつけています(ちなみにイーサリアムベースのコインです)。ここまで行くとほぼ株式ですが、株式と異なる点は、「議決権がない」「配当が容易(提携取引所に口座があればいい)」という特徴があります。配当が容易だからこそ、毎月のようにコインの持ち分に応じたイーサリアム(ETH)が提供されているのだと考えています。
仮想通貨と”価値主義 ”のかかわり
佐藤航洋さんが著書「お金2.0」で、『価値主義』を提唱されました。
つまり、今起きていることは、お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつあるということです。価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなっています。
(中略)
可視化された「資本」ではなく、お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくことが予想できます。
ざっくりとわたしの理解で説明すれば、資本主義ではお金にならないものは価値がなかったが、これから来ると思われる価値主義の世界では、今までお金に変わらなかった、直接は価値を持たなかったものも、ちゃんと評価される世界が来るよ、という話です。
佐藤航洋さんは、価値主義における価値の例として、ツイッターのフォロワー数。ソフトウェア会社における人材、データ。企業における働きやすさ、などを例にあげています。西野亮廣さんが「革命のファンファーレ」で提唱した、信用=お金だという「信用経済」も、価値主義に包括される概念だとわたしは考えています。
一般論ですが、人の価値観はそれぞれです。大体の傾向として世界の価値観は多様化しており、矛盾する価値観も同じ時間軸に同時に存在できるようになりました。それは社会が豊かになったという証拠でもありますが、ここで言いたいのは、インターネットという技術が、価値観の多様化を促進したということです。インターネットが地域的に離れているけれども同じ価値観をもった人たちをつなぎ合わせ、オンライン上でのコミュニティの成立を可能にしました。
同質の価値観を持った人たちが集まるコミュニティでは、コアになる特定の価値(共同幻想)が重要視される集団が形成されます。
例えば、あるアイドルやユーチューバーのファンクラブとか、アートが大好きな人たちの集まるサークルとか、地域おこしのために活動するNPOとか。
特定のコミュニティでの価値観を表現するために、独自の通貨があれば、コミュニティ特有の価値観をさらに強力に後押ししてくれることでしょう。その独自通貨を持つこと自体が構成員にとって価値であり、名誉ですらあり、独自通貨の保有がコミュニティへの帰属心を掻き立てます。その独自通貨に、仮想通貨を採用する。あるいは自分たちで作る、というのは面白い話だと思います。
本日も当ブログにお越しいただきありがとうございました。
やっぱり新しい概念の未来図を提案するのは難しいですね。
あげた具体例も最適というにはちょっと遠く、力不足を感じています。
まだまだ考え続けたいと思います。
(履歴)
2017年12月31日 初出
2018年1月29日 Δ1版
検討中の「賃上げ&減税セット」、18年度に施行できる?
人材確保が厳しくなるなか、経営者が人材投資に前向きになっていると先週日経にて報道がありました(12月13日)。社長100人アンケートによれば、政府が求める3%の賃上げを検討する経営者は現状1割に留まったものの、6割が人材投資を増やすと回答したそうです。
景気の回復と人材不足が相まって、賃金の上昇局面が近づいているいえそうです。
政府の求める賃上げに応じる、という人はまだ少ないということですが、賃上げとセットになった減税策が具体化すれば、さらに流れは変わりそうです。
これも新聞報道ですが、与党提案で「賃上げ&減税セット」が検討されています。すごく簡単に言うと、賃上げした企業は法人税を安くしますよ、という内容です。政府与党が求める賃上げに、企業へのエサがくっついたかたちですね。
大手企業よりも中小企業に手厚い内容になっており、うまく行けば日本全体で賃上げが発生し、景気のさらなる高揚が期待できます。
「賃上げ&減税セット」
内容は下表。(12月13日 日経より)
来年18年度には適用したいというスケジュールだとのこと。
TV報道ではモリカケ問題が国民の関心事だと言われていますが、個人的にはこの「賃上げ&減税セット」が一番の重要ごと、なんですけどね…。モリカケ問題なぞで税制審議をする時間がなくなった、ということの無いように、野党とマスコミには切にお願いしたいところです。国会ではワイドショーネタを提供するだけでなく、きちんと本来の仕事をもらいたいのです。
本日も当ブログにお越しいただきありがとうございます。
年収800万円以上ゾーンへの所得税UPと合わせると、年収100万円〜700万円ゾーンの所得底上げに政府与党ちからを入れていることがわかります。うまくいくといいですね。
【ギリシア人の物語Ⅲ 新しき力 塩野七生】 (1/29追記)
1年待った塩野七生さんの新作、【ギリシア人の物語】の第三巻がAmazonから届きました。前回は書影がなかったので、今あげます。
ほいっ。
目次
第二部 新しき力
第三部 ヘレニズム世界
十七歳の夏ーー読者に
ギリシア都市国家群を滅ぼした、マケドニアのアレクサンダー大王にかなりの分量を当てていることが目次だけでわかります。(第二章の新しき力、のところ)
滅ぼされた者の『逆さ鏡』が、滅ぼした者、なのだということなのかな。
そして滅ぼされた後のギリシアが、どう残ったか、ということで第三部ヘレニズム世界、という構成なんでしょうね。
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(1/29追記)
本を読み終えて、自分が勘違いしていたということに気が付きました。アレクサンダーは征服者というイメージでしたけれど、ポリスは破壊せずに穏当な支配下に置きながら、ギリシア世界を制覇したという人物だったんですね。各ポリスの自治は認めているし、本人もヘロドトスを好む文化人だったということで、アレクサンダーはギリシア世界の体現者ということで選ばれているのですね。
大王の名に相応しい天賦の才能と、若さゆえに不安定さを両立させていたアレクサンダー大王。人類史の中で最高クラスの芸術品で、とてもセクシーですね。
そんなアレクサンダー大王について、塩野七生女史がインタビューに答えていたのでリンクご紹介しておきます。
ちなみに、鬼才岩明均のヒストリエは、アレクサンダー大王の書記官のエウメネスが主人公の漫画です。これも合わせて眺めると楽しいかも知れません。
愉快な若者・ご学友たちの集まりである、「アレクサンダー大王御一行様」の楽しそうな雰囲気と、歴史にには表れない不穏さが想像できます。しかし人間群像鮮やかな東征の様子が、塩野女史の本と合わせて再構成できそうですね。
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本日も当ブログにお越しいただきありがとうございます。
幸い今日は金曜日。週末は本を読み耽る幸せ哉。
ギリシア人の物語Ⅲは、この本と一緒に買いました。
水素スタンドの建設計画のニュース。透けて見えたトヨタの思惑
昨日の報道なのですが、水素スタンドを11社連合で建設推進する計画が出たそうです。トヨタ自動車やJXTGエネルギーなど11社は、2022年3月末までに水素ステーションを国内80箇所に共同で建設。これにより国内ステーション数は倍増の見通し。
トヨタの他にも、日産自動車やホンダ、出光興産、東京ガス、岩谷産業、豊田通商、日本政策投資銀行などの11社が出資。来春にも共同出資会社を設立するそうです。
水素は、燃料電池車(FCV)の燃料。FCVとは、水素を車で分解し電気にしてモーターで走る車です。
マツダと提携して内燃機関を確保する一方で、ミライ(MIRAI)など電気自動車(EV)の開発を進めているトヨタ。しかしながら、やはり本命は水素の燃料電池車(FCV)だと再認識させてくれる報道です。
なるほど世界レベルの大企業。全方位に気を配りながら独自路線も押し通す余裕がさすがです。
今年10月の東京モーターショーにも出展した水素で動くバスも2018年から発売を予定、グループ会社のトヨタ織機も水素で動くフォークリフトの販売を拡大するなど、まずは産業用からの普及を目指すということで、ごりごり来ています。
ちょうどテスラは新車の開発が遅れ、発売延期になったこの時期のこの動き。トヨタも黙って負けてはいないというところでしょうか。
とまれ、日本政府は30年までにFCVやEVなど次世代自動車が新車販売に占める割合を5〜7割に引き上げる計画とのことで、やはり内燃機関車から次世代の車へ切り替わっていく流れはとまらないようです。
やはりトヨタの本命はFCV
中国・欧州がEV化へ年次目標を示し、相次いでEV化へ舵を切るなか、トヨタが打ち出すFCVという独自路線。
なかなか熱いですね。FCVは水素を電気へ変換して走るので、EVと互換できる技術や機構が多い。もしFCVの時代が来なくても、EVにすぐに切り替えることができてリスクが少ないというところも、独自のFCV路線を推し進められる理由でしょう。
ところで、FCVとEV、燃料以外には何が違うの? というところですが、ユーザー視点から見た時に一番重要な違いは、燃料の「充填時間」が違いとしてあげられるでしょう。
EVは航続距離という弱点を克服しつつありますが、充電時間が長いという弱点があります。急速充電の技術の開発は進んでいますが、それでもやはり満タンにするまで30分〜1時間はかかる。技術的にはかなり進んでいるのですが、実際にEVを使う身になって考えてみれば、時間に余裕があるときばかりでなし、急ぎのときは困りそうですよね。
しかし、その点、水素なら水素をしゅーっと封入するだけなので、今までのガソリン車と同じような使い勝手が再現できます。なのにガソリン車とは違って排出するのは水のみ、完全クリーンです。
2匹めのどじょうならぬプリウスを狙っているトヨタ
突然ですが、トヨタの顔とも言えるハイブリッド車「プリウス」が、今年何歳だかご存知でしょうか。
TV CMもしていたのでご存知の方も多いと思いますが、1997年に量産発売されたので、2017年の今年は20歳。発売当時は、「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーで売られた未来感のあるハイブリット車ですが、いつの間にかもう立派な大人です。
当時ーー20世紀末のことですがーーモータリゼーションの進展とともに問題となかった公害事件を受けて、自動車メーカー各社は「エコでクリーン」な車を作る技術を競っていました。EVも当時からありましたが、航続距離が課題で実用化はまだまだ先、という結論になりました。ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド技術は、理論上では現実解のひとつでしたが、モーターとエンジンを同時ないし交互に駆動させる技術機構が極めて難しく、欧州では実現不可能として諦められました。その後、欧州はエコカーにはディーゼルエンジンを採用。だから欧州車はディーゼル車が多いんですね。
しかしトヨタはハイブリッド技術を諦めませんでした。そしてついにハイブリッド車の本命であるプリウスを発売。しかしすぐに売れたわけではありません。1997年に発売し、国内販売台数100万台に至ったのは、発売から10年以上たった2010年(*)でした。その後、7年でぎゅーんと伸びて500万台に乗る大ヒット。
ヒットまでの間は、日本はともかく世界市場からはハイブリッドはダメだと散々ディスられましたが、大きな事故もなく世間に受け入れられ、苦節10年を経てプリウスは大ヒット車となりました。
この成功体験をもう一度! というのが、トヨタの本音なんでしょうね。昔、ハイブリッド技術は非主流で劣勢の位置に居ました。今のFCVに重なると言えば、重なります。
自動車の技術変更は自動車業界だけでなく、日本の、いえ世界の産業構造に変化を与えるインパクトがあります。なので自動車の技術レースはとてもエキサイティングですね。どんな結果になるか、興味を持って見守っています。
本日も当ブログにお越しいただきありがとうございました。
未来は、覗こうと思ったひとにはその姿を見せてくれるものですね。
(*)部分は、日経トレンディ記事を参考しています。
【思えば、孤独は美しい 糸井重里】
糸井重里さんの【思えば、孤独は美しい】が先日うちに届きました。
ラジオ番組の司会者が
「孤独を感じることは?」と質問した
とても軽やかに谷川俊太郎は答えた。
「孤独は前提でしょう」
夜を見ながら、風呂にでも入ろうか。
(孤独は前提 P156)
1ページに収まるぐらいの言葉たちが、300ページ弱に収められています。
詩文のような警句のような不思議な言葉たちです。
短いからさっと読めそうでいて、読めない。短い言葉の中に折りたたまれてぎゅっと濃縮されている意味と言葉を読んでいくと、なかなか読み飛ばせない。すごい情報密度です。でもそんな風に、本の中を、まるで対話しながら散歩するように読んでもらえるように、この本はできているんじゃないかな。
装丁もすごく凝っていて、ヒグチユウコさんのイラストは額に入れておきたいくらいの繊細で美しい一枚絵だし、縒り紙の表紙は持っていて手触りがいいし、側面はチョコレート色になっていて、すごくお洒落な感じがする。自分みたいな流行オンチが言うのもなんだけれど、喫茶店とかにインテリアとしてどうですか? ……とお薦めしてみる。
普段は電子書籍派だけれど、こういう本が一冊手元にあってもいいですねえ。ほぼ日手帳とセットで持ち歩いてもお洒落かも。少し自分の世界が広がった気がします。
本日も当ブログにお越しいただきありがとうございました。
他の本と一緒に買いました。
同系統の蒼井ブルーさんの本も一緒に。
日馬富士 騒動に思う
大相撲の横綱・日馬富士が貴乃花部屋の幕内・貴ノ岩を殴打した事件があり、警察の捜査が続いている中、日馬富士が引退を表明しました。
今回の事件は、角界の慣例・相撲協会の隠蔽体質・沈黙を守る貴乃花など問題が大きく広がってはいますが、一番大切な事件の事実関係がはっきりしていません。関係者の証言の信憑性がすごく低く、大きく取り上げられている報道も憶測が多いので、話半分にしか受け止めていません。
そんな中で、一方の当事者である貴乃花の考えがわかりそうな情報があったのでメモ。元のブログは2013年とかなり古いですが、親方をやるような人の考え方はそうそう変わらないことを考えると、参考になるのかも。
貴乃花のブログで一番好きな記事。貴乃花の弟子に対する思い、相撲道に対する直向きさ、熱さが伝わってくる。この人がここまで今怒っているということは、弟子と相撲道、この2つが侵されたからに他ならない。貴乃花という人間をよく知らない人に、読んでほしい。 pic.twitter.com/krpzaYI1p5
— 断末魔 (@izawajakahashi) 2017年11月30日
本日も当ブログにお越しいただきありがとうございました。
弱い立場の人を、体を張って守ろうという人は、だいたい間違っていないんだろうなって思ってます。